超人ザオタル(12)地平線の希望
わたしたちは千回も太陽が地平線に沈むのを見た。
それでも草原の景色は変わらなかった。
こうなったら野垂れ死にするまで歩いてやる。
私は毎日なかばやけくそでそう思っていた。
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その日も同じように草原を当てもなく歩いていた。
地平線に小さな影があるのを見つけた。
「あそこに何かありそうだ、ミスラ」
私はその影を見失うまいと目凝らした。
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「ええ、私にも見えますよ、ザオタル」
ミスラも嬉しそうな声でそう答えた。
私たちの気持ちはあの影に向かうことで一致していた。
その影は地平線に揺らめきながら現れたり消えたりした。
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それが何かわからないまま、見失わないように歩いた。
歩くことは虚しさや辛さではなく希望になった。
それがあるだけで、身体から力が湧き出てきた。
いまが歓びであり、私がここに生きる意味だった。
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だが、何日歩いてもそれに近づく気配すらなかった。
そこに見えているのに、手が届かないもどかしさ。
まるで砂漠の蜃気楼のようだ。
そうだ、あれは蜃気楼なのか。
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そう思うと、身体から力が抜けてきた。
「あれは蜃気楼なのか、ミスラ」
半ば絶望的な感じでそう尋ねた。
「あれは蜃気楼ではありませんよ。
確かにあれは在ります、ザオタル」
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ミスラはまだ希望を失っていないようだ。
私の歩調は明らかに重くなった。
うつむいて歩くことさえあった。
休息しながら、恨めしそうにあの影を見つめた。
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私は歩くことに疲れ果ててしまった。
「今日は休もう、ミスラ」
そう言って歩かない日が多くなっていった。
ミスラは黙って何かを考えていた。
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私は何かを考えることさえ嫌になっていた。
こんなことに何の意味もないのだ。
もう十分に道を歩いてきたではないか。
あらゆることに耐え忍び、そして歓びをも享受した。
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これ以上歩いても何の発見なく、同じような日々を繰り返すだけ。
それはそれで興味深いが、結局何も残らない。
いったい道は私に何を示そうとしているのか。
もしかすると、そんなものは何もないかもしれない。
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ミスラは何のために私と歩いているのだ。
私以上にミスラのこの時間には意味がない。
私の旅に意味がない以上、それは同じなのだ。
ある意味、私の犠牲になっているようなものだ。
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私は休息することにも疲れてきた。
思い立ってその場所に座って目を閉じた。
以前、こうして瞑想していたことを思い出した。
私は心の深いところに降り立った。
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そこには何もない暗闇だった。
歩く道もなく、他の経験の何もない。
静寂に満ちて、何の動きさえない。
私はただ無心でそこに立っていた。
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