超人ザオタル(19)道の意味
私はその日から岩山で瞑想の日々を送った。
ミスラは消えてしまったが、私の道はまだ終わっていないのだ。
終わっていないどころか、まだまだ先が見えなかった。
私がやっていることも、本当に道の終りへ続いているか分からない。
岩山の上に座って目を閉じる。
私の意識は深いところに落ちていく。
そこで私は自分が在るというところに焦点を合わせる。
それがずれたなら、また自分に戻していく。
自分が在るという感覚はあるが、それは姿形がない。
それは身体や思考ではないのだ。
在るという一種の感覚でしかない。
それでしか認められないものだ。
そのため、私の焦点は心の中の何かを探し出してずれていく。
そこからずれたなら、ずれたと分かる。
そうしてずれると、自分が在ると分からなくなる。
そしてまた、見えもしないその感覚に戻る。
こうしていれば自分は誰なのかを理解することができるのか。
理解できたことは自分とは姿形がない透明な存在だということ。
それでどうだというのだろうか。
それはもう知っているのだ。
これ以上、そのことに関わっている必要があるのか。
瞑想の領域が切り替わるのが分かった。
気づくと私はあの岩山に座っていて、隣にアムシャがいた。
「このまま瞑想を続けていけるのか、ザオタル」
静かな口調でアムシャはそう言って私を見た。
「この道の厳しさは苦痛があるからではない。
この道を行く理由が自分の中に芽生えずらいところにある。
それがなければ、以前の道を選択する場所へ戻ることになる。
ほとんどの人がここを去っていく。
本当の自分を見つけて、それが意味のないことだと結論づけるのだ。
だが、本当の自分の真実とはもっと奥行きがある。
それを知るためには、日々の瞑想が必要だ。
硬い地面を削るように、そこを掘り下げていかねばならない。
その先で真実に到達した時、何かを知るのだ。
表面的な一部の感覚ではない全知になる。
それもいまは信じるか信じないかの言葉でしかないが。
それでも、ザオタル、この瞑想を続けていくか」
私は即座に答えた。
「この瞑想をやめるつもりはありません」
ここまで来たら、最後まで極めてみるつもりだ。
ミスラがここまで導いてくれた。
それが何の意味もないとは思えなかった。
それに私はその意味の一端をつかんでいる気もしたのだ。
意味がないと思えることもその一部だ。
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