超人ザオタル(14)道を見つける
私は一日のほとんどを瞑想に費やすようになった。
もちろん、あの影を目指して草原を歩いてはいた。
だが、それは私の主たる目的ではなくなっていた。
私は瞑想の地で新たな道を見つけなければならない。
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「その道はどこにあるのだ、ミスラ」
私は何度もそう尋ねた。
「それはすぐそこにあるのですよ、ザオタル。
その場所は教られるようなものではありません」
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たいていミスラはそう答えるだけだった。
「ミスラはその道を知っているのか」
そう尋ねたこともある。
「もちろん知っています、ザオタル」
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「こうなることを知っていて、私に付いてきたのか」
私は多少騙されたような気がしてもいた。
「もちろんです。
その時々に必要な言葉をあなたに伝えるためです、ザオタル」
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いつもは寡黙なミスラがここまで話をするのは珍しい。
それだから、私もミスラの言葉に耳を傾ける気になった。
草原はどこまでも続き、どれだけ歩いてもあの影には辿り着けない。
私には心の中で道を見つけるしか突破口がなかった。
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それから太陽が千回も地平線に沈むのを見た。
それでも私はその道を見つけられずにいた。
何かを見落としている。
何かを見落としているのだ。
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心の奥の静寂に降り立つ。
見渡しても道らしいものは何もない。
道どころか何もないのだ。
何度もこのことを確かめてきた。
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私は誰なのだ。
そんな想いがどこからか私に届けられた。
そのとき、私は自分がここにいることを知った。
何もないのではなく、私がここにいるのだ。
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私は静寂ではなく、そこにいる自分を意識した。
いつもその状態だったのに気づかなかった。
私は自分に気づかずに瞑想していたのだ。
誰が瞑想しているかも分からずに。
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私は瞑想から出て、ゆっくりと目を開けた。
「ようやく、道を見つけましたね、ザオタル」
ミスラの声がした。
「これが道なのか」
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私は声にならない声でそうつぶやいた。
確かにこれは教えられるようなものではない。
自分で気づかなければ決して分からない。
そしてそれはあまりにも近くにあるのだ。
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「道だということは、またそこを歩くのだな、ミスラ」
私は念を押すようにミスラに尋ねた。
「そうです、そこが一番長い道になります、ザオタル」
ミスラはこころなしか嬉しそうな声でそう言った。
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道というものは、そこにあるなら歩かなければならない。
それは眺めるものではないのだ。
そして私はそこを歩く義務がある。
それは私がそれを知ってしまった人間だからだ。
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