超人ザオタル(15)自分の幻想
私は誰なのか。
これが私の道だった。
それは世界の道を超えて、心の中へと続いている。
私はようやくその扉を開けた。
-
そして、私は自分をそこに見つけたのだ。
確かにそこにいる自分。
これが私だと言える自分。
だが、ミスラはそれが一番長い道だと言う。
-
私にはそれは一番短い道に思える。
世界で歩いてきた長さを思えば、あまりにも短い道だ。
何が長いのか、私にはまったく分からなかった。
それはいつもすぐそこにあるのだ。
-
私は毎日瞑想をして、そこに降り立った。
そして自分がここにいると感じ続けた。
それだけで瞑想は満たされていた。
私はそうすることに幸せを感じていた。
-
それですべてを知ってしまった気がした。
草原を歩いているときでさえ、その幸福で満たされていた。
身体も心も歓びにあふれていて、空を飛ぶことさえできそうだった。
だが、私はまだ歩いていたのだ。
-
「もう歩く必要はないのではないか、ミスラ」
私は日課になっているこの旅に疑問を持った。
「まだ歩かなければなりません。ザオタル」
ミスラはそうとだけ告げた。
-
相変わらず地平線にはあの影が見え隠れしている。
私はもう興味を失っていたが、まだそれが歩く目標にはなっていた。
それについてミスラは何も言わなかった。
私は瞑想だけに興味を持って取り組んだ。
-
ある日、いつものように瞑想しているときのことだ。
あの感覚に私は疑いを持った。
ここにいる自分が急に不確かになったのだ。
とんでもない間違いをしているのではないかと不安になった。
-
その自分には姿形がないのだ。
これが自分といえる何もそこにはない。
ということは、自分は存在していないといえるのではないか。
存在していない自分を自分だと思ってきたのか。
-
瞑想でそこにいる自分を確かめてみた。
確かにそこにはいる。
ただ、姿形はなく、そういった確かさはなかった。
私はあわてて自分を探ってみた。
-
まるで透明な空気を探っているような感じだった。
私はこれを自分だと思ってきたのか。
それに比べれば、草原を歩いている自分の方が確かだった。
そこには身体や思考の確かさがあった。
-
瞑想から出て、草原を見渡した。
そこには私の身体があり、草原の景色があった。
それは否定できない確かなものだった。
それに比べて、瞑想の自分はもう何もない。
-
いったいこれはどういうことなのか。
私が分かったと思ったものは幻だったのか。
それは旅に疲れた私がつくりだした都合のいい幻想なのか。
だが、幻想はあれほど同じに繰り返されるものだろうか。
0コメント