超人ザオタル(104)幸せの前提条件

「…、まだよく理解できないことはあるのですが、

ザオタルさまが言わんとするところは分かる気がします。

ただ、もし私の愛する人が伴侶となってくれたときには、

私は歓びに満ち溢れて、幸せを感じてしまうでしょう。


それはいけないことなのでしょうか。

そうなっても喜ぶべきではないのでしょうか。

そもそも、そういった幸せを望んではならないのでしょうか。

私にはそてもそういうことができそうにない気がします」


シュマはそう言って、不安そうな顔をした。

「真の自分は自分だけが幸せであると言うことはありません。

それ以外の幸せを否定することはないのです。

シュマ殿の話の幸せとは、世界の出来事であり、


それはそれで起こっても何の問題もない。

もちろん、それでシュマ殿が幸せを感じても構いません。

それが罪なるとか不徳であるということもありません。

それが世界の本質であり、真の自分はそれを拒絶する訳がない。


何が大事かというと、

自分とは真の自分であると知っていることなのです。

それを理解していることが大前提として必要になります。

つまり、すでに完全な幸せの状態にあるということです。


完全な幸せの状態にあるのなら、

たとえ世界で儚い束の間の幸せに喜んで何が問題なのでしょう。

もちろん、その世界の幸せは色褪せて消えていくかもしれない。

しかし、決して消えない完全な幸せは既に手にしているのです。


真の自分は世界から独立しているため、変化から何の影響も受けません。

だから、シュマ殿が真の自分を知っているなら、美味しい食事に満たされ、

人から愛されることを歓び、夢を見ながら安らいでも

何の問題もなく、それに罪悪感を覚えることも、


それらを拒絶する必要もないのです」

「なるほど、そういうことなのですね。

世界の幸せの前に、真の自分という幸せを実現する。

そうすれば、世界の幸せが儚くても受け入れられる。


なんとなく分かったような気がします。

やはり、真の自分を知らなくてはなりませんね。

それを知らずに幸せを語ることはできない気がします」

シュマはそう言って、小さく何度もうなずいた。


太陽に温められた風が優しく吹き抜けていった。

私たちは沈黙した。

景色に目をやると、森や野原の緑が色鮮やかに輝いていた。

私はそこに幸せを感じた。


シュマもその景色に目を細めている。

この瞬間、世界から幸せを受け取っている。

それはすぐに移り変わる僅かな時間のことかもしれない。

真の自分はそれを邪魔することなく、

私の中でいつもの変わらない鮮烈さで存在していた。

空風瞑想

空風瞑想は真我実現の瞑想法です。瞑想を実践する中で、いままで気づかなかった心の新しい扉を開き、静寂でありながらも存在に満ち溢れ、完全に目覚めている本当の自分をそこに見つけていきます。そうして「私は誰か」の答えを見つけ、そこを自分の拠り所にするとき、新しい視点で人生を見つめることができるようになります。